渚あいみ展「新宿眼科画廊を解体せよ!」のおしらせ

渚あいみ展「新宿眼科画廊を解体せよ!」のおしらせ

2023.7.28-8.2

新宿眼科画廊 スペースE

12:00-20:00(7.28-8.1)
12:00-17:00(8.2)

〒160-0022 東京都新宿区新宿5-18−11 タナカビル1階

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開催によせて

「あなたがたはみな犯罪者である」

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かつて1960年代に、赤瀬川原平やオノ・ヨーコらが前衛的な芸術活動を展開した新橋内科画廊というギャラリーがありました。新宿眼科画廊はその新橋内科画廊へのオマージュでつけられた名前だそうです。さて、みなさんご承知のように、ほんとうに常識はすべて間違っているのです。現代のこの国の多くの場が、常識に侵食され思考停止状態に陥っています。しかし常識は変わり続けるものなので、いったん常識が変われば身分証や監視カメラや法律を信じている人のほうが異常者ということになるでしょう。古代の人類は森や洞窟に住んでいたので扉も鍵もありません。知恵の実を食べたアダムとイブは楽園を追放されました。この21世紀初頭において知恵の実はパソコンやスマートフォンというよりも監視カメラやマイナンバーカードと言えます。大衆はつねに大衆心理に支配され、イエス・キリストをユダヤの王と信奉していたのに、処刑されるとなれば態度を変えました。常識を信じるほうが頭を使わなくてラクだからです。人類はくだらない思考能力だけを残し、あのとき知恵の実がほんとうに甘くて美味だったことは忘れてしまいました。

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“常識は病気のもと”

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そのような常識の象徴が国家による法律ならば、その法律のご本尊が日本国憲法です。この国の多くの法律は憲法に違反しています。「私たちは助け合って豊かで優しい社会をつくれるはずだ」と言うのが憲法の前文の内容だからです。法律をつくるということ自体が憲法に反しているとも言えます。自衛隊と在日米軍は憲法9条違反であるというのはよく語られますが、政治家も警察も憲法違反です。残念ながら芸術も芸能も文化も文明も、そして現代人の生活も、ほとんどは憲法違反です。つまり、みなさんは犯罪者なのです。常識を信じながら常識のご本尊である憲法に違反しているみなさんは犯罪者であるわけです。では、どだい憲法違反の中に存在する都市生活者たちが、白い壁に絵や写真を飾ったり、それを見たりしたところでいったい何になるのでしょうか。祈りを忘れ、神を殺した時点で、芸術は空虚と卑しさのブレンド状態であり、確かにそこに実在するはずの自分自身に対しても敗北を喫しています。

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”常識はすべて間違っている”

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なぜ壁は白いのか。なぜ恐竜は滅びたのか。なぜ空気は個体や液体ではないのか。損得勘定と人間関係に終始するのは今日限りだ。相対は幕を閉じ、雨音とともに、絶対が光を放つだろう。あの60年代のアングラ文化華やかりし頃、新橋内科画廊やネオダダにさえ馴染めなかった人が荒川修作でした。「反芸術」というコンセプトを打ち出す同世代の赤瀬川たちからも遠く離れた地平に荒川はいたのです。彼はアメリカに渡り、マルセル・デュシャンと出会い、そしてマドリン・ギンズと出会いました。「意味のメカニズム」を経て、荒川とギンズは「天命反転」という答えに行き着きます。お笑い演芸にたとえれば、「反芸術」は漫才におけるボケとツッコミですが、「天命反転」はタモリの初期の言語脱構築芸ハナモゲラに相当します。ゼロの分解。だって三鷹天命反転住宅は決して、「トマソン」ではないわけですから。あのカラフルは、荒川が幼い頃に目の当たりにした名古屋の空襲の著しい悲しみの反転です。

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おむすび → //光そぼろ\\

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(2023.4.22)

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追記

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新宿眼科画廊のスタッフの人たちは、この文章を拒否せずにそのまま掲載し、搬入の時間がどうだこうだというメールを何度も送ってきて、驚いた。とにかく、内科画廊の名前だけもじっていることは間違っている。そしてその妙な感覚は、現代の東京ひいては日本全体に横たわる感覚そのものである。

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だから、何も展示しない一週間を。真っ白な空間を。

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そこから光が放たれる。

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(2023.7.27)

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