麻布十番のミッキーマウス

麻布十番のミッキーマウス

キリストの復活祭前夜、麻布十番の網代公園のベンチに座って、花が咲いていない木を見上げていた。昔、このあたりに花街があった。大正2年に国に許可された当初は、待合茶屋1軒、芸妓屋7軒、芸者14人、半玉6人と規模が小さく、現在も街には一才の名残がない。花街や遊廓や赤線だった区域は何かしら面影を残しているところが多いが、シティ港区では跡形ひとつないのである。

.

ふと見ると、大きなネズミが公園にやって来て、滑り台の近くに隠れた。電波塔のお膝元、高級料理が美味しいのか、このあたりにはネズミが多いそうだ。あれはミッキーマウスかもしれない。僕らのクラブのリーダーは、東京について愛について歴史について資本主義について宇宙について悩み、夜を賭け、夜を駆けた。

.



Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *